木曜日, 8月 20, 2015

カマキリとカエル、どっちが大事?(松本)

少し前の話になりますが、この3月に出版された『保育のための心理学ワークブック』(小平英志・田倉さやか編 ナカニシヤ出版)にて、2章『子どもの認知とことばの発達』を執筆しています。その中で、ある先生から教えていただいた、次のエピソードを紹介させていただきました。

この春から夏にかけて、模擬講義等でいくつかの高等学校を訪問させていただいた折にも、高校生のみなさんに投げかけ、一緒に考えてみたエピソードです。

紙面の関係で本文は短くなっているので、少し補足して掲載いたします。
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 ヒキガエルを飼っていた、とある幼稚園での話です。
 エサとして生きている虫が必要だとわかり、意気揚々と散歩に出かけた5歳児たち。
 いつもの散歩は虫取りに早変わり。首尾よくカマキリを捕まえることができました。
 捕まえたあやかちゃんも、クラスのみんなも大喜びです。

 さて、園に帰り、いざそれをカエルにあげる段になりなりました。
 みんなのカエルのためにとってきたのだから、あげよう!と盛り上がる子どもたちのいっぽうで、ふと我にかえって保育者に尋ねたのは、当のあやかちゃんでした。

 「ねえ、せんせい、カマキリとカエル、どっちが大事?」
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みなさんが保育者だとすれば、この場面で子どもにどんなことばを返すでしょうか。

どのようなことばで応答する(しない)にせよ、子どもはこの場面を通じて、さまざまな思いをめぐらせ、考えと経験を深めていくでしょう。
さらにいえば、この場面は、あやかちゃんと保育者との関係だけで成り立つものではありません。あやかちゃんが思いをめぐらせ、考えたくなったのは、他の子どもたちとともに過ごす、魅力的な活動が土台にあってこそでしょう。またそんなあやかちゃんの思いを知ることは、その後の場面で、他の子どもたちにとっても、その考えと経験を深めるきっかけとなるにちがいありません。

知識習得や社会的スキルなど、教育の成果として可視化し、評価しやすい指標もあれば、そのような指標で評価することは難しいけれど、これからの人生をかたちづくる経験もあります。

そんな場面がたくさん散りばめられているのが、保育ならではの学びの魅力なのだと思います。
またそれを引き出すのは、そのような場面と向き合う大人の人間観かもしれません。

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