4/22/2015

食を越えてさらに輝く食の力(松本)

新年度が始まっていますね。
遅まきながら、新年度最初の投稿として、3月に刊行された雑誌『現代と保育91号に書かせていただいた、連載原稿について紹介したいと思います。

表題の原稿のサブタイトルは『給食職員とともにつくりあげる2歳児保育』
愛知・第二そだち保育園の、2歳児こぐまぐみの保育実践を紹介しました。

給食職員が保育室に出張してのクッキング保育で、一緒に野菜をちぎったりして楽しむ子どもたち。
その野菜は、子どもたちの目の前で混ぜられ、おいしそうな和え物に。
そこから立ち上がる香りに、身を乗り出すほど心惹かれる姿を見せるいっぽう、自分たちでクッキングしたからといって、必ずしも全員がよく食べる!とはならないところが、2歳児の「らしい」姿でもあります。

そんなクッキング保育の取り組みを経た数日後のこと。
クッキング当日は必ずしもよく食べたわけではないK君が自ら始めたのは「やきそばクッキングごっこ」。
楽しそうな様子はあっという間にクラス全体に広がっていきます。
そんな子どもたちのごっこ遊びはしばらく続き、最終的には「(給食職員の)くみ先生ごっこ」にまで発展していきました。

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今ちょうど、ゼミで4年生の一人が、保育における「食」のあり方をテーマに卒業研究に取り組んでいます。
先日ゼミのみんなでの議論を経て見えてきたのは、バイキング給食やクッキングなど、食に関する楽しい取り組みは、ふだんの生活に支えられてこそ成り立ち、その魅力が発揮されるのだろうということです。
ハッとするようなイベントをそのものに、子どもたちの姿を変える力があるのではなく、日々の姿を土台にしてそれらの魅力的な活動が位置づいたとき、それははじめて子どもたちの発達の豊かさを支え、具体的な変化を引き出すものとなりうる。
ヒトにとって日々繰り返される営みである食にとっても、同じようなことが言えるのではないでしょうか。

ままごとごっこ遊びに給食職員がしぜんに登場する場面は、日々の保育と給食のつながりに支えられてこそ成り立ったもののはずです。さらにそれは「すぐそばに給食室がある」園環境があったからこそ可能になったのでしょう。
クッキング保育があるから誰もが食べたくなるわけではないし、そこで食べた姿がその後も継続する保障はありません。
けれどもこの取り組みを経験した子どもたちは、これからの人生を過ごす礎となる「食」に対するポジティブな思いを手に入れたことでしょう。

多くの園で行われている「食」に関する活動は、子どもたちがよく食べるようになるためのものではなく、それを越えた取り組みとなりうる。
この実践は、そんなことを改めて私たちに教えてくれます。